11月21日シリア(2) パルミラ 「砂漠の薔薇」



遊牧民ベドウィ

「砂漠の薔薇」。
夕日に赤く照らされる砂漠や遺跡の事を言うそうだ。理由はよくわからないが、砂漠に映る夕日はまるで薔薇のように赤い。まさに神秘的な美しさである。

今回は訪れたのはその砂漠の薔薇を見ることができる、シリアの巨大遺跡・世界遺産「パルミラ遺跡」。パルミラ遺跡はシルクロードの中継都市として栄えた古代ローマ帝国の影響を強く受けた都市だった。いくつも連なる柱が絵になる遺跡である。

パルミラ遺跡の近くにある「アラブ城」は高台に建てられ、そこから見える砂漠とパルミラ遺跡の景色は絶景。そこから夕日を眺め、中東の神秘と美しさを肌で感じた。

シリア。日本になじみのない国ではあるが、見どころはたくさん。この場所意外にも文明の起源となったユーフラテス川や、世界遺産「アレッポ」、映画『天空の城ラピュタ』のモデルとも言われている「クラシック・デ・シバリエ」。治安も比較的良い。とても魅力のある国だ。

トルコ風呂であるハンマームも体験。とても気持ちよく、体を休めることができた。

「ダマスカス出発」
------------------------
昨日の夜到着し、ヨルダンとイスラエルで会った大学生2人組とホテルで再会。今日映画『天空の城ラピュタ』のモデルといわれる「クラシック・デ・シバリエ』に行くと言うので一緒に付いて行くことにした。

大学生2人組と他に、大学生1人とお兄さんという感じの30歳2人組も一緒に出発。彼らはシリア最大の遺跡「パルミラ遺跡」へ行くのだという。大学生一人はなんと自分とまったく同じ名前だったので驚いた。ヒロと呼ばれている。お兄さんの名前はタケさん。シリアに長い間滞在する予定はなかったので、先にシリア最大の見どころである「パルミラ遺跡」へ行く彼ら2人に付いて行くことにした。

「パルミラ行きのバス」
------------------------
アラビア諸国を旅していて、思った通りに事が進むことは滅多にない。今回もその考えに間違いがないことを思い知らされた。

パルミラ行きのバス・ステーション「ガラージュ・ハラスター」へ乗り合いタクシーセルビスに乗って行く。料金は0.1ディナール程度(約20円)。この辺りの交通機関はとにかく安い。

バス・ステーションに着いて、たくさんあるバス会社の中からパルミラ行きのバスを探す。最初に聞いたところのバス会社は片道250ディナール(約500円)と言ってきた。そんなものかとそのバス会社と話を進めたが、他にも安いところがあるかもしれないので発券はちょっとまってくれと伝えた。探すと他に学生料金で150ディナール(約300円)で行けるバス会社があった。そちらの方に移ろうと自分達3人は最初のバス会社に伝えると、
「もうチケット発券しちゃったら無理だよ。俺らのバスは高いけど最新のバスだぜ。」
だが自分達は安い方が良かった。
「じゃあ200ディナール(約400円)にまけとくよ。」

それでも高い。いくら自分達が他のバス会社に移ると言っても、英語が通じないようなふりをしてくる。お金はすでに払ってしまっているのだが、返してくれない。自分は少し声を上げたが、タケさんが冷静に対応してくれる。だがそれでも相手はお金を返そうとしない。仕方がないのでそのバス会社で行くことにした。とても気分が悪い。

やっぱりここはアラビア諸国の一国であった。

「スズキタカシ」
------------------------
バスに乗って約3時間。バスは突然周りに建物も何もない場所に止まった。
「ここがパルミラだよ。」
え?ここが?バスを降りると近くに車が一台止まっているのみだった。

バスが過ぎ去ると、その近くにあった車から一人のアラブ人男が出てきた。その車、良く見ると「スズキタカシ。格安ツアー…」などと日本語で書かれている紙が貼られている。男は自分達の方にやってくると、
「こんにちは。スズキタカシです。」
と日本語で話しかけてくるではないか。だが、どう見てもスズキタカシには見えない。正直言って怪しい。どうやら彼はツアーガイド・タクシーの運転手の様で、これからパルミラのツアーに参加しないかと誘ってきた。だが、自分達はツアーに参加するつもりはない。だが、ここからパルミラ遺跡まで歩いて行くのも道と距離が解らないのでとりあえずパルミラ遺跡まで乗せて行ってくれることにした。料金は100ポンド(約200円)。そこまで悪い値段ではない。

「パルミラ遺跡到着」
------------------------
パルミラ遺跡

パルミラ遺跡へはタクシーで10分程で到着した。スズキタカシはしきりにツアーを勧めてくる。最初は20米ドルくらいのツアーを勧めてきたが、終いには3米ドルのツアーになった。
「パルミラ遺跡、アラブ城、そしてバスターミナルまで乗せて行って3ドルだ。」
これならば文句ない値段である。当初はパルミラ遺跡のみ行くつもりだったが、3ドルならばアラブ城にも行ってみようということになった。

パルミラ遺跡で自分達を下ろすと、スズキタカシは1時間半後にまた集合しようと言って去って行った。

パルミラ遺跡は広い。じっくり見ていては1時間半では足りなかった。いくつも連なる柱がとても美しい。かつてここにどれだけ大きく、立派な建物が立っていたのだろうか。この遺跡の大きさが、かつてシルクロードの中継地として栄えていたこの都市の繁栄ぶりを垣間見ることができる。

「遊牧民ベドウィン」
------------------------
遊牧民ベドウィンの子供達

遺跡近くに遊牧民であるベドウィンの住む家があった。遊牧民らしく簡素なテントだ。頼むと家の中を見せてくれた。真ん中ストーブがあるだけの簡素な造りである。必要最低限のものしか置かれていない。

写真を頼むと快く応じてくれた。外国人と話すことがあまりないのだろうか、終始恥ずかしそうにしている。だが、とても優しい人々だった。

「アラブ城の夕日」
------------------------
アラブ城からの景色

パルミラ遺跡近くの丘にそびえるアラブ城。スズキタカシの車に乗って自分達は向かった。

アラブ城の前にたどり着くと、広大に広がる砂漠、点々とあるオアシス。目の前に絶景が広がる。チケットを購入してアラブ城の屋上に行くと、そこから見えるのは更に広大で、美しい景色だ。今まで見てきた中東の景色で一番美しい景色である。


アラブ城からの夕日

「もうこんなとこ2度と来れないわよね。」
近くにいた日本人ツアー客のおばさんが口にした。どんな僻地に行ってもいる日本人観光客ツアーである。だが、おばさんの口にした言葉は、この景色の素晴らしさに感動したのは自分だけではないことを教えてくれた。

夕日が落ち、辺りは暗くなる。だが、その薄暗い光が遺跡や山々に照らされ、景色をより一層味のあるものにした。残念ながら雲のせいでアラブ城から「砂漠の薔薇」を見ることができなかった。

「砂漠の薔薇」
--------------------------

砂漠の薔薇?

アラブ城から再びスズキタカシの車に乗り、宿のある首都ダマスカスへ行くバスターミナルに向かう。

バスターミナルで降り、西の空を見た。すると空が真っ赤に染まっているではないか。これが「砂漠の薔薇」と呼ぶべき現象か。その赤はいつも見るあるのオレンジ色の空ではなく、ピンクに近い色。まさに「薔薇」色。宝石のように輝いていた。この光がパルミラ遺跡に当たればとても美しいのだろうが、残念ながらバスターミナルから遺跡を見ることができなかった。

「シリアの料理」
--------------------------
ダマスカスへは3時間程で到着。到着して自分達はすぐにレストランへ向かった。実は今日まだまともなものを食べていない。食べたものと言えば朝食べたチョコパンとチーズパン(各15ポンド:約30円)である。

ヒロが安くステーキが食べられるレストランがあるというので、そこに向かうことにした。

店に入って早速ステーキを注文。だが、出てきたのはステーキというより、ショウガ焼きのように薄く切られた炒め料理。肉はラムで、作り置きのように肉が堅く、バター味のソースはとても脂っこい。正直言って自分の口に合うものではなかった。

付け合わせに酢でつけられたきゅうりやピーマン、にんじんが出されるのだが、その酢の味付けが何か抜けているような味で、あまり美味しいものではない。

このレストランに限ったことかもしれないが、シリアの料理をこれ以後も美味しいと感じたことはほとんどなかった。あったと言えばケーキやパン、お菓子ぐらいである。

「ハンマーム(トルコ風呂)」
--------------------------
宿にあるシャワーは温水が出ないという。近くにハンマーム(トルコ風呂)があるということなので行ってみることにした。ハンマームは日本の風呂のように湯船があるわけではなく、スチーム風呂だ。低料金でマッサージも行ってくれる。今回が初めてなのでとても楽しみだ。

入ると、脱衣所で服を脱ぎ、腰に布を巻く。このスタイルでトルコ風呂に入るわけだ。自分で持ってきたシャンプーとタオルを持って中へ。

まずはサウナに入って体の汗を流す。サウナは日本にあるものと全く同じようなものだった。10分程入った後、いよいよスチーム風呂へ。木製の扉を開けると、部屋の中に暖かい水蒸気が充満していた。少々息苦しい。そして洗い場がいくつかあり、蛇口をひねってお湯を流し続けながら体を洗う。トルコ風呂から出ると、思ったより体が温まっていることに気付いた。

そして次はマッサージ。お金を払ってマッサージをしてもらうのは今回が人生初めてである。手術台のようなベットに寝かされ、体中にヌルヌルする液体が塗られる。そして足から背中、お腹、腕までくまなく体をほぐしてくれた。最初はくすぐったかったが、慣れるととても気持ちの良いものである。これで一回100ポンド(約200円)程。安い。

マッサージの後は別室に連れて行かれて垢すり。タイルの上に寝かされ、こちらも腕、足、背中、お腹とやってくれた。だが、軽くこする程度であまり垢が取れた感じはしない。これは一回50ポンド(約100円)やはり安い。

終わった後、腰にまかれた濡れた布を乾いた布へと交換してくれ、体を大きなタオルで包んでくれる。まるで王様気分である。

トルコ風呂が200ポンド(約400円)、サウナが100ポンド(約200円)で、トータル450ポンド(約900円)。ちょっと贅沢してしまったが、あまりすることができない良い体験をすることができた。

タケノコ

0 件のコメント:

コメントを投稿

Instagram