8月18日 ハンガリー(1):首都ブタペスト 「初めての日本人宿」

今回はハンガリーの首都ブタペストにやってきた。

ブタペストはドナウ川を中心に広がる街。ドナウ川沿いにはゴシック様式の大きな国会議事堂や王宮などの古い建築物がたくさん立ち並び、とても美しい。

ドナウ川にはオーストリアのウィーンやスロバキアへ向かう国際フェリーが運航する。川から他の国へ行くとはなんだか不思議だ。いかにもヨーロッパという感じである。

ブタペストには、旅の途中で会ったモトさんに勧められたアンダンテという日本人宿がある。日本人宿は、海外ながら日本人が経営する宿。ヨーロッパにも結構あるようだ。自分は今回日本人宿に初めて行く。一体日本人宿とはどんなものか楽しみだ。

「ブタペスト東駅到着」
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電車は朝5時過ぎに到着予定だったが、目的地に到着したのは午前8時。3時間も遅れて到着した。電車に乗っていたのは約14時間…長い道のりだった。ヨーロッパではこのくらい遅れるのは普通なのだろうか。

ブタペスト東駅はかにもヨーロッパの駅という感じ。中世の大きな建物の中にプラットホームがあるのだ。建物にはレトロな大きな窓があり、太陽の光が広い構内を照らす。なんだかロマンチックである。

「日本人宿アンダンテへ」
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私が予約した日本人宿アンダンテは、『地球の歩き方「ヨーロッパ」』にも載っている。人気な宿のようだ。

東駅から徒歩20分ほどでアンダンテに到着。大きな看板が出ていないので分りづらかったが、入口にちょうど宿の管理人さんがいたので難なく中に入ることができた。

管理人さんは短髪の金髪だったので、イケイケのお兄ちゃんだと思ったが、しっかりと宿の説明を最初から最後まで丁寧に教えてくれたのでとても良かった。声も優しい口調だったので、イケイケのお兄ちゃんとは違うようである。久し振りに日本式のサービスを受け、とても感心。今までさまざまな宿に訪れたが、やっぱり日本のサービスの質は世界最高水準であるように思う。

宿の中に入ると、他の宿にはない独特の雰囲気を感じた。肌は黒く、男だけど髪の毛が長いいかにも旅人という人が数人。もちろんいるのは全員日本人で、部屋の中では日本語が飛び交っている。

宿の中には日本の漫画がたくさん置かれている。古いマンガや新しいマンガ、少女漫画や少年漫画など様々である。宿の宿泊客は、朝からみんなそれを読み漁っている。
「今日の4時には復活するかな。」
「そうですね。今日の4時には復活しましょう。」
そう言って漫画を読み続ける。なんだか今までの宿にはないスローな空気である。

ある人はこの宿に10日以上滞在している。やることと言ったら漫画を読んだりインターネットをすること。外に出ることはスーパーに行くことぐらいなようだ。これがうわさに聞く、「沈没」というものなのだろう。だが、私はあまりのスローさに驚いた。

私は数人に挨拶したが、最初はなんだか空気が違うと思って逃げ出すように宿を後にしてしまった。宿から出る時、

「これから観光?頑張ってね!」

観光は頑張るものなのか…いかにも日本という空気が流れている日本人宿である。

「ブタペストの地下鉄」
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ブタペスト市内は広く、とてもきれいな街。ルーマニアと比べて野犬がたくさんいることもない。空に電線があふれかえることもない。物価も少し高い。だんだん先進国圏に入ってきたという感じである。

まず地下鉄に乗り、ドナウ川西側の丘の上にある王宮の丘に向かう。

ハンガリーの地下鉄は検査が厳しいと悪名高い。地下鉄には他のヨーロッパ諸国と同じように改札がなく、切符に入口近くで刻印を押すだけ。なので簡単にタダ乗り乗車ができるわけだが、切符のチェックがある時がある。その時にただ乗り乗車が見つかると、高額の罰金を請求される。ハンガリーでは、その検査がとても厳しく、切符を失くしたといっても容赦ないようである。

そんな厳しい検査をする手間をかけるなら、日本のような改札口を設置すればよいだけの話ではないかと思ってしまうところであるが、とにかく地下鉄の切符は絶対になくさないようにしなければならない。

「王宮の丘」
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地下鉄はドナウ川の下を通るせいか、とても地下深くに作られている。そのため、エスカレーターが長い。日本のエスカレーターと違って速さも1.5なので乗る時は気をつけなければならない。

王宮の丘には旧王宮や、ブタペストの旧市街などがきれいな状態で保存されている。まるで中世にタイムスリップしたような感じになる。

王宮の丘からはブタペスト市内が一望できる。ドナウ川とゴシック様式の大きな国会議事堂を中心に広がる中世の街並みが良く見えてとても美しかった。

王宮の丘に登るにはケーブルカーがあるのだが、運賃が高かったのでやめた。そこまで丘が高いわけでもない。私は丘から歩いて丘の下まで歩いた。

「エアー・レース」
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王宮の丘を降り、ドナウ川にかかる世界遺産「くさり橋」を渡るつもりだった。だが、なぜか通行止め。なぜだろうと思って川を見てみると、飛行機がスピードを出して曲芸のように飛び回っているではないか。

実は明日から2日間、ここブタペストで「Red Bull Air Race World Championship」という飛行機レースが開催される。飛行機は明日の本番に向けて調整をしているようだ。スタートとゴールがこのくさり橋の下なので、安全のためにくさり橋を閉鎖。川沿いのトラム(市電)も運休している。

川のまわりにはたくさんの見物客が集まり、飛行機の練習を眺めている。飛行機は川に建てられたコーンすれすれを走り、もう少しで当たるのではないかと私はハラハラした。垂直に飛んだり、宙返りする姿はとてもかっこいい。将来一度あんな風に、自由に空を飛び回ってみたいな。

「ブダペストの宗教建築物」
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飛行機を見たあと見回ったのが、ブタペストにある美しい建築の数々。

まず向かったのが大聖堂。外見も壮大だったが、中のつくりも細かい装飾がたくさん施されてとても美しかった。今まで訪れてきた東欧の教会は、天井のフレスコ画がかすれているなど時代を感じた。だが、この教会はローマにあるような教会と同じように、内装がとてもきれいに保存されている。この教会は新しいものなのだろうか。

次に向かったのが、ユダヤ教の教会だ。私はユダヤ教の文化に触れるのが今回初めてだったのだが、やはりユダヤ教もユダヤ教で独特の雰囲気を持っている。

ユダヤ教の教会に入る時、男性は必ず頭にかぶり物をしなければならない。私はなにもかぶっていなかったので、入口で小さな円形の紙を渡され、教会内でかぶっていた。建物の中にはいたるところにイスラム教のシンボルである「ダビデの星」がある。

建物には、屋根やシャンデリアなどにたくさんの丸い形をしたものが使われている。これはイスラム教独自の文化なのだろうか。

教会の隣には博物館もあり、そこにはユダヤ人が虐待されるホロコーストに関するものも展示されている。ユダヤ人達は第二次世界大戦終了まで多くの迫害を受けていた。その残酷な歴史を二度と繰り返さないためにも、このように博物館として展示して記憶に残すことは必要だろう。

「ブタペストの温泉」
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ブタペストの北東の方には大きな公園があり、ハンガリーの英雄達が並ぶ英雄広場、そしてその両隣にギリシャのパルテノン神殿のような建物が建つ。これらの建物は現代美術館とアート・ギャラリーとなっている。

その奥には大きな城Vajdahunyad Castleがある。この城はルーマニアで見た2つの城よりも広く、外壁には多くの細かい彫刻が施されている。大きな窓がとても印象的。可能であれば、こんな城に一度住んでみたいものである。

公園のさらに奥に行くと、温泉施設がある。実は、ブタペストは温泉が有名なのだ。ここのほかにも、市内には数か所温泉がある。もちろん入る時には水着着用必須である。だが、一部温泉では裸で入れるのだとか。

温泉施設は、日本人からするととてもじゃないけれど温泉には見えない。伝統のありそうな建物が使用され、建物の外側と内側にはいたるところに彫刻がなされている。まるで宮殿である。ここは本当に温泉なのか。値段を聞くと、一人なんと3000フォリント(1500円)もかかるという。ここはハンガリーの温泉に入ってみたいところだが、ちょっと値段が高いのでやめた。

「地下鉄の券売機」
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帰りは地下鉄で帰ろうと、地下鉄の券売機で切符を買おうとした。ハンガリーの交通機関は基本一回300フォリント(約150円)。ルーマニではほとんど50円以内で収まっていたのだが、ハンガリーは日本より少し安いぐらいである。

そんな切符を買おうと300フォリント分コインを入れたが、機械が一向に反応してくれない。おかしい。そしえ駅の係員に相談しても英語が通じないので、状況をわかってもらえなかったのだろう。私は再び300フォリント支払うはめになってしまった。

「アンダンテで夕食」
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市内の観光を終えた私は、日本人宿アンダンテに戻って夕食を作ることにした。ハンガリーの物価は今までと比べて高いのだ。

閉店間際のスーパーで、パプリカと人参、玉ねぎとトマト、そしてソーセージ2本と米1kgを購入。全部で500フォリント(約250円)と安い。ハンガリーのワインもまたうまいというので、スーパー最安値、300フォリント(約150円)のワインを買った。今度のワインはどんな味がするのだろう。

この材料で、以前買ったタイカレーペーストを使ってタイカレーを作ろうと宿に戻った。

宿に入ると、キッチンで料理する女の人2人がいる。作っている量が多い。なんでも、みんなで一緒に夕食を食べるために料理をしているのだという。突然だが、私も入れてもらえることになった。今日買った食材は明日にお預けである。

作ってくれたのが、炒め物とハンガリー料理(?)ハンガリーに来て早速ハンガリー料理を作ってしまうとはすごい。料理はとても美味しかった。

日本人宿には色々な人がいる。

私と同じ大学生は他に3人もいた。うち2人は同い年。2人とも休学して旅行しているのだとか。私も休学をしていこうと考えていたときがあったので、親近感が沸く。1人はこの夏休みを利用して、3週間欧州を旅行しているようだ。そして、2人はK大生である。この旅行でなぜかよくK大生に会う。

そして、大学院生も1人いたのだが、同じ学校だったので驚いた。自分の学校じゃ一人旅なんてやる人あんまりいないものだと思っていたので驚いた。

他にいたのは、もう2年も3年も長い旅をしている人達。こうした日本人宿に泊まってスローライフを楽しんでいるようである。様々な場所に行っているので色々な情報を持っている。たくさんのことを教えてくれたのでとても助かった。本当に感謝である。

「旅人マッサージ師」
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日本人の旅人で噂になっている人がいる。それはマサシという人。大学を卒業してから10年以上も旅を続けているのだという。どうやって稼いでいるかというと、マッサージだ。旅先でアパートを借り、そこでマッサージ業を営んで収入を得ているのだという。

そんな短期間で客が集まるのかと思ってしまうが、腕はピカイチで世界中に彼のファンがいるからそんなことはないのだという。一回3時間30ユーロ(約3900円)。3時間もマッサージしてくれるとはすごい。一度マッサージをやってもらったという人が宿にいたが、本当に気持ちよかったのだという。

彼には色々ポリシーがあるそうだ。例えば、旅先で買い足すことを嫌い、同じ服を何年も着続けているのだという。何年も着続けているが、別に服がしわくちゃなんてことはない。洗濯機を一切使わず、手洗いで丁寧に洗うことでしわくちゃになることを防いでいるのだという。

そして彼は防犯用にいつも杖を持ち歩いているのだという。襲われた時に、できる振りをして杖を振り回すと、大抵の襲ってきた人はびっくりして逃げていくのだという。

旅の達人マサシ。一度会ってみたい。
アンダンテホスルは、最初独特の空気にびっくりしていたが、とても優しくて親しみやすい人がたくさんいたので楽しかった。また日本人宿があったら訪れてみたい。

タケノコ

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