台北
社会人になって初めての海外旅行。
飛行機に乗ると、「また戻ってきたんだな。」と実感させられる。それほどまでに、昨年までの世界旅行は自分にとって印象深いものだった。
今回の旅程はたったの5泊6日。しかし、この5泊6日の旅は私を日常の世界から解き放ち、再び刺激的な毎日を与えてくれるのだ。
今回の旅は台湾。沖縄のすぐ隣にあるこの国は、沖縄と同じく、パイナップルやマンゴーなどが実る南国である。
第二次世界大戦前まで、この国は日本の一部であった。その名残は、未だに数多く残っている。
今回も特に計画もせず、宿も前日に1泊しか予約していない無計画旅行。やっぱり現地に行かないと、何が良いのかわからないので、私は現地に行ってから何をするのか計画する。せっかく良い旅の情報が入っても、ホテルの予約等で行けなくなってしまうのが私は嫌いだ。
今回はどんなストーリーが待ち受けているのだろうか。
「桃園国際空港」
空港へ着き、久々に日本以外の空気を吸った。また帰ってきたんだ。また戻ってきたんだ。嬉しくて仕方がなかった。
アジアの国々であれば、多少香辛料の匂いが漂っていたりするのかと思ったが、そんなことはなかった。案外、台湾の空気は日本とそこまで変わらない。
空港を降り、バスと電車で台北市内へ向かう。バスだけの方が安くて楽なのだが、台湾の電車に一度乗ってみたかった。
空港から駅に向かうバスは30台湾ドル(約90円)。台湾の公共機関の料金は比較的安い。
バスはとてもゆったりした3列シート。90円でこんなに良いバスに乗っていいものかと思う。バスの中では日本の演歌のような音楽が流れている。日本の音楽とは少し違うのだが、どこか懐かしい音楽だった。
「台湾の新幹線」
バスで20分程乗り、桃園駅へ。そこから台北市内へは台湾の高速鉄道、「高鐵」に乗る。この高鐵、なんと日本の新幹線がベースになっている。
真新しい桃園駅へ到着し、早速乗車。料金は160元(約400円)。新幹線なのに1000円以下だ。安い。
中に入ると、そこはもう新幹線。座席の配置やシートの質、電光掲示板などほぼ同じ。電車が発車する時の感じも同じ。まさに新幹線がそのまま台湾にやってきたという感じだった。
海外にいながら、どこか日本を感じた。
「日本人宿 JO」
今回泊まるのは日本人宿「JO」。道が入り組み、最初見つけるのに一苦労。台北は治安が良いと聞いたけれど、異国の暗い夜道を歩くのはいつものことながら緊張する。
宿に入ると、台湾に中国語を習いにきているという中年男性ケンさん(仮称)。ケンさんは観光目的で入国できる期間3ヶ月をフルに使い、3ヶ月台湾に滞在しては日本や中国に行き、台湾に戻るということを繰り返しているみたいだ。それほど何度も台湾に来るとはよほど台湾が好きなのだろう。
私は到着が少し遅れてしまったので、オーナーは外に出たあとだった。しばらく待ったが、戻ってこなかったので、夜市へと向かうことにした。
「寧夏夜市」
寧夏夜市
台湾の夜といえば「夜市」。夜になると路面一杯に屋台街が並び、夜遅くまで人々の活気に溢れている場所である。
寧夏夜市はそこまで大きな夜市ではないみたいだが、十分活気が充ち溢れていた。市場の3分の1程が的屋や輪投げなどの子供が遊ぶお店が並び、あと3分の2は全て食べ物街だ。
麺、炒飯、焼き鳥、中華風の煮物、南国フルーツジュースなどたくさんのものが売られている。
見た目がそのまま「たこ焼き」のものが売られていたので購入して試してみることに。何度か大阪へ行ったのに一度も食べることができなかったたこ焼きを、まさかここ台湾で食べることになるとは思わなかった。
台湾のたこ焼きは少し甘い。中にとうもろこしが入っているからだ。台湾人は甘いもの好みなのだろうか。
一際際立っているものがあった。「臭豆腐」である。漢方で豆腐を煮た物だとお店のおじさんは言う。「臭豆腐」が売られている場所の近くは酷く臭うのだ。
…あまりの臭さに今回は食べることを見送った。
「夜市の台湾人」
ラーメンが食べたいと思ったが文字が読めず手間取っている自分を見て話しかけてきた台湾人がいた。英語が話せるようだ。自分が日本人とわかると、次は日本語で話しだした。
「年寄りはみんな日本語できるさ。ここは昔日本だったんだもの。」
1945年、第二次世界大戦が終わるまで、この台湾は日本だった。65年前というと、まだそう遠くない過去である。この台湾が65年前日本だったなんて、なんだか想像できない。
台湾に限らず、このような市場や古い建物が並ぶ町並みを見ると、一昔前の日本を見ているようである。西洋風のレンガ造りでできた街が並ぶ姿は、明治時代にできた建物がそのまま残っているように見える。日本の場合はそのような建物をあまり見かけない。
だが、日本は特殊なのかもしれない。ただ経済発展が著しいだけではない。戦争で、昔の建物などほとんど焼けてしまったのだろう。
海外に出ると、日本の内側がより鮮明になってくる。私の場合はそんな時が多い。
「日本人宿の旅行者達」
日本人宿「JO」に泊まっている日本人は、中国語の学習に来ているケンさんなど様々な人がいたけれど、一つ共通点あった。
それはみんな台湾が大好きだということ。もう何度も台湾に訪れているリピーターが多かった。
確かに、ご飯も美味しいし、親日的だし、物価も安いし、日本とは違う、アジア的な要素をもつこの台湾は、深堀していけばいく程魅力が大きくなっていく国かもしれない。
残りの旅行が楽しみだ。