8月21日 ポーランド(1):クラコフ&アウシュビッツ「アウシュビッツ強制収容所」

アウシュビッツ強制収容所はナチスのユダヤ人に対するホロコーストが最も酷く行われた場所としてあまりにも有名だ。

人類が忘れてはいけない場所として、『負の世界遺産』として登録されている。ちなみに原爆ドームも『負の世界遺産』に登録されている。

列車で連れてこられたユダヤ人達は、何も知らされることなくガス室に案内され、知らぬ間に命を失う。そしてそれらの死体を隣接する焼却炉で燃やして灰にする。そしてその灰は焼却施設の裏にある穴へと放り込まれるのだ。まるで流れ作業のように人を殺戮するその行為は、残酷さ極まりない。

そのアウシュビッツ強制収容所とは実際にどんな場所なのか。自分の目で確かめるため、現地へと向かった。

「ポーランド・クラコフ駅到着」
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夜行列車は朝早くクラコフ駅に到着。このクラコフへ共に来たドイツ人に別れを告げた。

クラコフの駅は改装しているようで、ホームの地下はシートで囲まれた場所があり、コンテナを改造したチケット売り場があった。

駅には大きくて新しいショッピングモールが建ち、ブランド品やレストラン、スーパーマーケットなどなんでも揃っていた。ポーランドというとあまり豊かではないというイメージを持っていたが、このような近代的なショッピングモールを見てそれが偏見だっとわかった。

クラコフ駅の隣にバスターミナルがある。駅とバスターミナルが近いとは便利だ。そこにコインロッカーがあったので預けた。ロッカーは24時間4ズヴォティ(約120円)。安い。

このクラコフからは、世界遺産アウシュビッツ強制収容所への直通バスが結構な頻度で出ている。時間を調べてみると、今からちょうど30分後ぐらいに出発だ。

先ほど見つけたスーパーでバナナとリンゴを買い、まだ少しお腹が減っていたので1.5ズボティ(約45円)のクリームパンを買った。ポーランドは物価が安い。

「アウシュビッツへ」
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朝食を済ませた後、バスに乗ってアウシュビッツへ向かった。バスターミナルにいた係員が言った場所と違う場所にバスがやってきたので、危うくバスを見過ごすところだった。

バスは満席で、私の前にいた3人のグループが、みんなで一緒にいきたいからと1つ空いていた席を譲ってくれた。アウシュビッツへの運賃は8ズボティ(約240円)で、所要時間は約2時間。夜行列車で真夜中の3時に乗り換えだったのでまともに寝ていなかった自分はバスの中でずっと眠っていた。

起きると、何やら林の中へと続く道があるところでバスを降ろされた。ほかの乗客にここがアウシュビッツかと聞くと、そうだという。アウシュビッツというと、線路の引き込み線を思い出すが、その線路は見当たらない。本当にここはアウシュビッツなのか。

林の奥に行くと、アウシュビッツ博物館という名の入った建物が現れた。そこにも線路などの自分のアウシュビッツが想像していたものはない。ここは本当にアウシュビッツ強制所なのか。

アウシュビッツの地図が書かれている看板があり、見てみるとアウシュビッツは3つもあることがわかった。今自分がいるのが第1アウシュビッツ。自分が創造しているアウシュビッツは第2アウシュビッツであるようだ。看板に書かれている文字は3ヶ国語で書かれていた。ひとつはポーランド語、もう一つは英語、そしてもうひとつはユダヤ語である。やはりこの地に訪れるユダヤ人達は多いようだ。

建物の中にある受付を済ませ、アウシュビッツのツアーに参加する。9時~15時まではツアーに参加しなければアウシュビッツに入ることができないのだ。料金は学割が効いて24ズボティ(約720円)。ポーランドにしては高いお金である。

言語は日本語はない。あとで聞いてみたところ、予約すれば日本語のガイドツアーもあるのだとか。私は英語のツアーを選んだ。

「第一アウシュビッツ強制収容所」
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ツアーは午前10時から。ツアーを申し込んでから10分ほどで始まった。

私の他に、同じ年くらいの女性1人と、おばさん2人
の日本人3人がツアーに参加していた。やっぱり観光名所に行くと、必ずと言っていいほど日本人に遭遇する。

ツアーに参加するのにヘッドホンが貸し出された。このヘッドホンはオーディオガイド等ではなく、ガイドの声を聞くためのもの。なるほど、何人ものグループがツアーに参加しているため、このヘッドホンなしでは聞きづらくなってしまうからだろう。

第一アウシュビッツ収容所にはたくさんの建物があり、各棟に主にユダヤ人達が強制収容されていたようだ。収容所は男性用と女性用に分かれている。

最初、しずかな森の中にこの第一アウシュビッツ強制収容所があったので、意外にものどかな空気が漂っていたのだが、収容所の中に入るにつれ、そののどかな空気は消え、ずっしりと重たい空気になっていった。

収容所となっていた建物にはたくさんのものが展示されているのだが、中でも強烈だったのがここで死んだ人々の髪の毛の山だ。目測で、幅30メートル、奥行き5メートルの大きなショーケースに山のように髪の毛が積み上げられているのだ。一体どれだけの人の髪の毛がここにあるのか。ナチス親衛隊は、この髪の毛を使って布を作っていたようだ。殺した人の髪の毛を使って布を作っていたとは、人間の命を家畜程度にしか思っていなかったのだろうか。

「第二アウシュビッツ強制収容所」
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第一アウシュビッツ強制収容所のツアーは2時間にも及び、とても充実した内容だった。続いて無料のシャトル
に乗って、第二アウシュビッツ強制収容所へ15分程かけて向かう。

第二アウシュビッツ強制収容所は、鉄道引き込み線があるアウシュビッツ最大の収容所である。

鉄道に乗って連れてこられた人々は、労働に適するか適さないかに判別され、労働に適さないものは即刻ガス室に連れていかれ、殺されたのだ。

労働に適すると判断され生かされたとしても、地獄のような生活が待っている。彼らは農家を改造した建物で暮らすわけだが、その多くはとても簡素に作られているのだ。冬には零下10度を下回る極寒の地であることを考えると、この強制収容所は地獄のような場所だったのだろう。

一つの小屋に入る人数はなんと6000人。とても人間が住める環境ではない。この強制収容所はあまりにも過酷だ。

強制収容所の奥にはガス室が二つあるのだが、ナチスが証拠隠滅のために破壊し、今はその廃墟が残るのみである。そのガス室の裏に、燃やされた死体から出た灰が埋められている場所がある。
「今自分が歩いているこの場所にも人が焼かれた灰が積もっているのかもしれません。」
ガイドはそう話していた。

人類史上こんなに醜い歴史があるとは信じがたいが、事実だ。実際にこの目でその現場を見ることで、改めてその残酷さを深く感じることができた。

このような歴史は2度と繰り返してはならない。

「ツアーの日本人」
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ツアーには日本人3人が参加していると述べたが、おばさん二人を含むグループは別のツアーガイドが担当していたので、自分のグループにいたのは日本人1人だけだ。

話してみると、彼女は大学院生で、ドイツにいる友人に会いに行ったついでに東欧を旅行しているのだという。

彼女は朝寝坊して電車を逃したため、タクシーを一日貸し切ってクラコフからこのアウシュビッツにきているのだとか。タクシーを一日貸し切るとはすごい。一日7000円でタクシーを貸し切ることができたという。タクシーを貸し切る料金としては安いようだが、私にそんな豪遊はできない。

「クラコフへ」
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帰りもアウシュビッツからクラコフまで直接バスが出ていると思っていたが、第2アウシュビッツ強制収容所のインフォメーションに聞くと、ここからはバスが出ていないという。

「橋の手前で左に曲がったところにクラコフ行きのバスが来るバス停があるわ。10分程度よ。」

言われるままに歩いてみたが、バス停らしきものはない。地元の住民に場所を聞いてみると、鉄道駅にそのバス停があるという。確かにインフォメーションの言うとおりに行けば鉄道駅への入り口に差し掛かるので、間違いではなかったが、途中分かれ道等もあったので分かりづらかった。10分程度ではとてもじゃないがいけそうにない。

やはり、インフォメーションの情報を全て丸のみにすることは避け、色々な人に道を訪ねて正確な情報を弾き出すのが妥当な方法だろう。

アウシュビッツのツアーは3時間以上にも及んでいたので、もう昼食の時間はとおに過ぎていた。駅にファーストフードの店が三軒あったので、安くておいしそうな店を選んで中に入った。

ただ、メニューは全てポーランド語表記。店員にも英語が通じない。これは困ったと思ったが、店の客が食べている肉料理がとてもおいしそうだったので、その料理を指さしていただくことにした。値段は、肉料理とフライドポテトを合わせて10ズボティ(約300円)。やっぱりポーランドは安い。

電車がちょうどやってきたので、帰りはバスでなく電車でクラコフへ向かった。2時間弱の距離で運賃は11ズボティ(約330円)。バスより若干値段が高い。昨日の夜行列車で睡眠不足だった私は、電車の席に座るなりすぐに寝た。

「クラコフ駅のインフォメーション」
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クラコフに着いたのは午後17時頃。今日アウシュビッツを見た後クラコフに帰ってクラコフ観光もしようと考えていたが、アウシュビッツのツアーが思ったより長かったので今日クラコフ観光するのはもう不可能だ。今日一泊して明日クラコフを歩いて回ることにしよう。

クラコフに一泊する予定はなかったのでここから宿探しである。駅にあるインターネットで調べたところ、このクラコフの宿泊料金は1泊最低8ユーロ(1050円)程。やっぱりここポーランドの物価は安いようである。

駅にもホテルのインフォメーションがあり、あまり紹介されるホテルに期待していなかったが、いいものがあるかもしれないので一応調べてもらった。
「ドミトリーで一番安いホテルを教えてください。」
そう頼んで調べてもらい、教えてもらったのが駅から遠い上、10ユーロ(1300円)もする場所。相場よりも高い。断ってインフォメーションを出ようとすると、受付の人が、
「インフォメーションを通さなくても値段は一緒。ここで予約していった方が無難です。」
そう言うがその値段が高いし、立地条件も悪いのだ。そんなホテルに用はない。

「クラコフの宿探し」
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とりあえずインフォメーションで地図をもらい、この辺りの地理をつかむ。そして駅にあったインターネットコーナーで「Hostel World.com」というサイトを使って宿を検索、5つ程リストアップして地図に書き込み歩いて回ることにした。

一つ目の宿は駅から15分程度。レセプションに行くと、内装がきれいで設備も整っているようだ。ここに泊まりたい。だが、
「ごめんなさい。今日は満室です。」
やっぱり当日の夕方に宿を探すとこのように言われることが多い。

2つ目の宿は駅から20分程度離れたところ。ちょっと遠い。外装はとても古いが、最近できた宿なのか内装はとても新しかった。

「8ユーロの部屋は満室だけど、10ユーロの部屋なら空いているよ。」

10ユーロと言えば駅で紹介された値段と同じだが、内装がとても良いし、設備も充実し、朝食付きだというのでこの宿に泊まることに決めた。宿の名前は「Hostel Deco」だ。

この宿は安宿の割に内装に凝っていて、とてもおしゃれ。壁には名前は女優の写真が数多く飾られていた。オーナーはこの女優がよっぽど好きなのだろう。

「宿の日本人」
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この宿のコミュニティールームに行くと、日本人のような人がパソコンをいじっていた。話しかけてみると、やっぱり日本人だ。

なんでもドイツに1年間滞在する予定だったが、ドイツに飽きてしまったのでこうしてヨーロッパ各国を旅しているようである。私と同じような貧乏旅行をしているようだ。
「1年くらいヨーロッパにいようと思ったけどな。貧しい生活しながら長い間ヨーロッパにいても意味ないから、今度アイスランドに行ってパーッとつかって日本に帰るわ。」
ヨーロッパだけを考えているのならばそんな旅行のスタイルもありかもしれない。ただ、自分は様々な国や街を見てみたいだけなので、それができれば貧乏旅行でもかまわない。

「夕食」
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このクラコフに長期滞在する予定はなかったので、ポーランドのお金をあまり持っていなかった。でも両替せずにこれで全部済むようにしたい。そう思い、私は夜もファーストフードの店に行き、5ズボディ(約150円)の長いトーストを食べて夕食を済ませた。

タケノコ

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