11月24日レバノン(2) ベールバック・クサラ:「6つの巨大な柱とワインの旅」


ベールバック遺跡

今回行くのはギリシャ、アテネにあるパルテノン神殿より大きい神殿が2つある世界遺産ベールバック遺跡とワインの産地クサラ。

ベールバック遺跡はこの地域を治めたローマ帝国によって築かれた。紀元60年前後に基礎ができ、この遺跡で一番大きな最高神ジュピター神殿ができ、その後酒の神バッカス神殿、愛と美の女神ビーナス神殿が建てられた。ジュピター神殿は現在6ポンの柱しか残っていないが、1本高さ20m、直径2.5mの柱が54本も建っていたのだ。

次に向かったのがワインの産地クサラ。この国レバノンが公用語がアラビア語とフランス語であることからもわかるように、フランスの影響がとても強い国。イスラム教徒が多い中東でワインの産地があるのはどこか違和感があるが、このクサラワインはフランスで数々の賞を受賞する程の味なのだという。ワインは世界6大洞窟ワインセラーの中で熟成される。人工的なものではなく、自然にできた全長2kmの洞窟内でじっくりとワインを寝かせるのだ。

レバノンは遺跡がたくさんあったり、ヨーロッパと中東が交わり独自の文化を形成していたりと、魅力がいっぱい。

ただ、気になるのが他の中東諸国と比べ、際立って兵士の数が多いこと。首都ベイルート旧市街には所々に兵士が警備しているため、少し息苦しかった。レバノン紛争が終結しても、未だにテロへの警戒が必要であるようだ。早くこの地域にも平和が訪れることを心から願う。

「乗り合いタクシーで出会ったレバノン兵」
------------------------------
朝8時頃起床し、ホテルの前から出るセルビス(乗り合いタクシー)に載ってコーラ・セルビス・バスターミナルへ。そこからベールバック神殿まではセルビスで片道3時間程で4000LL(約220円)だ。中東の交通機関は安い。

その中で隣に、帰省するレバノン兵が座った。
「どこ出身だ?韓国か?中国か?」
最近日本人かと聞かれる機会が少ない。この辺りには日本人はあまり訪れないのだろうか。
どこに住んでいるのかという会話から、徐々にレバノン紛争の話になってきた。

「イスラエルをどう思うか。アメリカは好きか。」

実は昨日も宿の従業員に同じようなことを聞かれた。

「ビズボラ(パレスチナの地をイスラエルから取り戻そうとしてレバノン紛争のきっかけを作った政治・軍事組織)をどう思うか。」

地元の人々と中東政治の深い話をするのは好ましくないし、相手を変に刺激してしまう可能性があるのであまり話したくない。自分は兵士に対してこう答えた。というより質問から逃げた。

「アメリカには行ったことがないからアメリカ人はわからないけれど、ヨルダン、シリア、レバノンにいるパレスチナ人は皆いい人ばかりで好きだよ。」

だが、このように質問をしてくるということは、イスラエル・パレスチナ問題がこの辺りの人々に深く根付いていることを裏付けることになる。心の底ではまだレバノン紛争は終結していないようだ。

外務省の安全情報にレバノンの治安が良くないことが書かれていたので、最近どうなのか兵士に聞くと、
「最近は何もないよ。今は平和さ。」
と答えてくれた。この平和がこのまま続くことを心から願う。

「ベールバック遺跡へ」
------------------------------

ベールバック遺跡

セルビスを一回乗り換え、ベールバック遺跡へ到着。広い範囲に渡ってローマ遺跡が並ぶ。

チケット(学生7000LL:約400円)を支払い中へ。遺跡の周りは緑でいっぱい。ここはまるでヨーロッパのようだ。大きな中広場に出て、その奥に高さ20mにもなるジュピター神殿の柱が6本建っている。遠くから見るとあまり大きく感じられないが、近くにいって柱の近くに行くとその大きさに驚く。何十世紀も昔にこんな巨大建造物ができていたとは驚きである。

原型をほとんどとどめているバッカス神殿も見もの。多くの崩れた神殿を見てきたが、ここまで形をそのままにしている神殿は初めてだ。

ベールバック遺跡は広範囲に渡って多くの遺跡が残っているのでとても魅力的。昔の風景が頭の中で想像できる。現在の世界ならば機会があればどの国だって訪れることはできる。だけど過去は当然不可能。いつか過去にも旅できるようになる日が来るのだろうか。

「クサラ・シャト―」
------------------------------

クサラ・シャト―

ベールバックの街で表面がパリパリに焼かれたケバブを食べた後、セルビスでクサラへ出発。クサラはベールバックとベイルートのちょうど中間地点にある。

途中、という街にで降り、そこから歩いて30分。行きは運よく地元の人が車で連れて行ってくれてた。

ワイン製造所クサラ・シャト―の周りにはブドウ畑が広がり、建物の裏には芝生と緑に色付く葉が生い茂る木々が並ぶ。まるでヨーロッパの田舎に来たみたいだ。

中に入り、試飲ツアーを申し込むと早速案内してくれた。訪れた時、訪問客は自分一人。自分一人のために無料ツアーをしてくれるとは手厚いおもてなしである。

まずはDVDを見た後、白1杯、ロゼ1杯、赤2杯の試飲をさせてくれた。自分はワイン初心者なので、どのようにしてワインを楽しむのか教えてもらった。まずはグラスを回してその色を楽しむ。その透明度でワインが新しいものか古いものかがわかる。透明度が高いもの程古いものなのだとか。そして香りを楽しみ、口に入れる。唾が混ざるとワインの味が変わってしまうので、舌の先でワインの味を確かめるようにすると良いのだという。


洞窟のワイン醸成施設

その後ワインを熟成させる洞窟へ。この製造所の歴史を交え、この洞窟について事細かに教えてくれた。自然にできた最高のワイン熟成所。ワインに適して洞窟が偶然できたというのも驚きだが、この洞窟を発見し、ワインに利用しようと思いついた人もすごい。

宿で仲良くなった人々と一緒に飲もうと思い、赤のミニボトルワインを3ドル(約270円)で購入した。皆で一緒に飲むのが楽しみである。

「レバノン料理レストランLe Chef」
------------------------------
セルビスでベイルートに帰ると、辺りはもう真っ暗になっていた。あまり夜一人で歩き回りたくなかったが、仕方がない。旧市街で何か良いレストランはないか探したが、どこも料金は高めだった。仕方がないので、昨日も訪れたレバノン料理レストランLe Chefへ向かった。


Le Chef の従業員。常にWelcome を連呼する。

レストランに入ると昨日と同じ従業員が、低くて大きな声で、
「Welcome Japan! Welcome!」
と連呼してくる。昨日自分が来たことを覚えていてくれた。店内を見ると、同じ宿に泊っている人達が10人程集まって一緒に食事をしていた。昨日仲良くなったポーランド人のアダムやイタリア人のジョルダンも同じだった。自分も一緒に食べることとなり、宿のみんなでレバノン料理。隣にいたのはフランス人だったが、彼は過去に2人も日本人の彼女がいたのだというので、時々日本語の単語を口にする。職業はフリーランスのサウンドエディター。メディア関係の仕事はやっぱり大変なのだという。


食べたのはレバノン風クスクス(クスクスはアフリカ料理)

自分達はその後近くにバーに行ってビールを一本飲み、深夜までしゃべった。2人がカナダとオーストラリア出身のネイティブ。やっぱりネイティブの英語は早くて聞き取りづらい。

宿に良い人々がいると、旅が一層楽しいものになる。今日は楽しい一日だった。

タケノコ

0 件のコメント:

コメントを投稿

Instagram