10月26日 エジプト(2)・カイロ 「イスラムの世界」





エジプトにはイスラムの世界が広がっている。

公用語はアラビア語。万国共通だと思っていた数字も、アラビア語表記である。夜明けと共にアザーン(お祈りの時間を知らせるお告げ)が街中に響きわたり、多くの人々がモスクへと集まって行く姿はここがイスラム世界であることを思い知らされる。

イスラム教には様々な規則がある。
代表的なのはお酒と豚を口に入れてはいけないこと。

だが、イスラム教徒が多くを占めるここエジプトには、地元のビールが存在する。売られている場所は限られているのだが、買うことはできる。この国はそこまでイスラム教が厳格に信仰されているわけではないようだ。

今日はそんなイスラム教国の首都、カイロを歩き回った。


「サファリ・ホテル」
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世界三大日本人宿の一つ、サファリ・ホテル。最初はその雰囲気に驚いたが、時が経つと慣れてくる。人間慣れれば大抵の場所に適応できるものだ。

荷支度をしてカイロ市内へ出発する時、自分の隣のベッドで暮らしている(もう1カ月ここにいる)方に、
「今日餃子食べる?」
と聞かれた。ここの宿泊客はみんなで手伝いあいながら毎夜夕飯を作っているようだ。今日は餃子。面白そうなので頼んでみた。

「エジプト考古学博物館」
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エジプト考古学博物館

一番初めに訪れたのは「エジプト考古学博物館」。サファリホテルから徒歩15分程で行ける。ここには古代エジプトの遺物が12万点も収容されている。なんといっても目玉は「ツタンカーメンのマスク」。少年王ツタンカーメンのミイラが被っていた純金製のマスクである。

考古学博物館の回りには銃器を持ったツアーリスト・ポリスが至るところにいる。テロを警戒しているのだろうか。治安は良くないようである。

セキュリティーゲートで荷物を調べられた後、受付にカメラを預ける。館内にカメラを持ち込むことは禁止されているからだ。料金は一般60ポンド(約900円)、学生30ポンド(約450円)。今回国際学生証を発行せずに来たので一般料金を支払った。ヨーロッパでは使えるところも限られていたし、この辺りは料金自体が安いので別にいらないと思っていたが、観光名所は意外と高く、学生証の割引率も高かった。

館内に入ってまず訪れたのが、ツタンカーメンの部屋。2階の奥にあり、そこだけ観光客が異常に集まっている。ツタンカーメンのマスクは意外と小さい。9歳で即位し、18歳で命を落とした「少年王」のマスクらしい大きさだ。ただ、小さいながらマスク自体は豪華で美しい。なにせ重さ11kgの純金製だ。

ただ、このマスクはツタンカーメンのミイラと完全にくっ付いていて、考古学者がこのマスクをミイラから取り外す際、バーナーを使用したのだとか。本来ミイラは、永遠の命を願って作られたもの。その死生観をもっと尊重すべきだろう。

考古学博物館には他にも像やミイラ、ミイラを入れる棺など、数々の遺品が展示されている。展示されているものは「死」に関するものが多い。古代エジプトでは死生観をとても大事にしていた証拠だろう。

「コシャリ」
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コシャリ

コシャリはエジプトの国民食とも言われるもの(「World Guide エジプト編」より)。これは一度食べてみなくてはと思い、博物館近くにあったコシャリの店へ入った。

コシャリは小中大から選べ、それぞれ5, 6, 8ポンド(約75、90、120円)。やっぱりエジプトは安い。迷わず大を注文し、待つこと10分程でコシャリが出てきた。

短く切ったマカロニとスパゲティ、ご飯、レンズ豆の上にトマトソースとオニオンフライが載って、お好みでチリソースを掛ける。まるで炭水化物のオンパレードだ。

味は、旨くも不味くもない。重たいので、口に合う人と合わない人がいるだろう。だが、お腹は一杯になった。

「エジプトの商売人」
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次に訪れたのが、エジプトを象徴する「ギザの三大ピラミッド」。考古学博物館の近くからバスで1時間程。料金は2ポンド(約30円)。安い。

バスを降り、ピラミッドまで歩き始めた時、一人のエジプト人が話しかけてくる。
「こんにちは。どこから来たの?名前は?」
エジプト人は気さくな人が多いのだが、ここは観光地。見るからに観光客を相手にする商売人である。しばらく歩くと、他の男を紹介してくる。
「こっち来な。」
と言って馬乗り場に案内しようとしてくる。
「俺は馬なんて乗らないよ。」
「何言ってんだ。馬に乗らないとすごい距離を歩くことになるぞ。ピラミッドの中に入るにはそれぞれチケットが必要なんだ。でもここで馬代払えば全部見れるようになるよ。安くしとくからさ。」
こういった商人の話しは大抵嘘である。ピラミッドを見た感じそこまで離れているわけでもなさそうだ。ピラミッドの入場券は、一番大きなクフ王のピラミッドの場合、一日300枚しか発行されないし、一枚100ポンド(約1500円)もする。
「80ポンド(約1200円)でまけとくよ。」
この商人にピラミッドに特別待遇で入る権限があるとは全く思えない。大嘘だ。もう商売人の話しを聞くことなくその場を立ち去った。

「ギザ三大ピラミッド」
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チケットオフィスでピラミッドの周りを見て回るだけのエリア・チケット(一般60ポンド(約900円)、学生半額)を手に入れ、早速ピラミッドの近くに寄った。

ピラミッドは幅も高さも想像を超える大きさだ。ピラミッドを構成するブロックは大きく、一体どれだけの労力を使ってこのピラミッドを作ったのか。何のために作ったのか。とにかくその迫力には圧倒される。

ピラミッドの周辺を歩いていると、様々な商人が話しかけてくる。
「これ無料であげるよ。どうぞ。」
そう言ってビニル袋で包装されている布を渡される。何か胡散臭いのですぐに返した。

ラクダに乗ってくる商人が写真を撮ってくれと言ってくる。撮影料でも取られるのかと思って聞くと、
「タダだから大丈夫だよ。」
「お金持ってないからね。」
と言って写真を撮る。そして今度は、
「ラクダに乗りな。写真撮ってあげるよ。」
怪しい。だが一度乗ってみたかったのでお金を持っていないことを強調して乗った。何かあったら近くにいるツアーリストポリスに向かって叫べば良いと思った。
 写真を撮られ、降りた後案の定商人はお金を請求してくる。
「私のためじゃなく、このラクダにお金を払ってくれよ。」
「タダって言ったじゃないか。」
「ラクダのあめだよ。」
実際に満足したので1.5ポンド(約22.5円)を渡すと、
「10米ドル(約980円)持ってないのか?おつりもあるぞ。」
としつこく言ってくる。頭にきたので、
「ふざけるな。タダって言っただろう。」
と怒鳴って1.5ポンドを放り投げて立ち去った。やっぱり商人は商人である。

「再びサファリホテルへ」
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帰りにおいしそうなフルーツ屋があったのでそこでフルーツパフェを購入。マンゴー、バナナ、ヨーグルト、ストロベリーソースなどが入ってなんと2ポンド(約30円)。こんなに安くて良いのかと思うくらい安い。

カメラを持って街を歩いていると、色々なエジプト人が
「俺を撮ってくれ。」
と声を掛けてくる。こんなこと初めてだ。店に入る度にその店員を撮っていた。だが、そんな親しみやすいエジプト人が私は好きだ。

サファリホテルに到着すると朝に頼んでおいた餃子が出てきて、20人くらいがロビーで一緒になり餃子を食べた。エジプトで餃子を食べるとは違和感を感じたが、中々おいしい。宿の人にこれから行く中東諸国の情報を聞くことができて良かった。


前回のヨーロッパ旅行からすでに1カ月が経っていた。まだ体が一人旅に慣れていないようで、ひどく疲れていた。部屋で麻雀をする人々を背に、私は一人床に就いた。

タケノコ

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