8月30日 フィンランド(1)トルニオ~首都ヘルシンキ:「首都ヘルシンキへ」


フィンランドが誇る企業、世界携帯電話機器メーカー首位 NOKIA

ちょっと堅い話。

2001年から4年連続国際競争力世界第1位だった国。それはどこか。


答えはフィンランドである。


近年フィンランドの経済成長は著しい。その秘訣は3つある。


まず1つは充実した社会保険制度。

フィンランドの法律はフィンランドに在住するすべての人、子供から病人、失業者、高齢者といった生活弱者でも平等な生活水準を維持し生活できるような制度を確立している。

高齢者ケア・介護、障害者福祉、リハビリ、訓練、福祉用具の充実、保育などフィンランドでは福祉、サービス制度が充実しており高負担ながら高福祉。こうして安心して生活できる社会が実現するのだ。

2つ目は教育制度の無料化。

フィンランドでは、なんと大学まで学費が無料。勉強さえすればどんな大学だって入ることができるのだ。教育の質も最高レベル。なんと教師全員が修士号の資格をもっている。

その結果はどうだ。OECD学習到達度ランキングで200年まで過去3回1位。教育水準は世界トップレベルだ。

ちなみに携帯電話業界でフィンランド企業NOKIAを世界第1位にしたCEO(最高経営責任者)は修士号を3つも持っている。


3つ目がハイテク産業への投資。

フィンランドにはテケス(フィンランド技術庁)が、産官協力していけるように総予算600億円を使い、民間プロジェクトの15%~50%の資金を援助する。しかも職員350人は民間人から集められた精鋭たちだ。

投資案件は常に民間と国に厳しい評価が下されるので、効率が良い投資が多く行われる。日本にも産官の協力体制があるが、違いはこの厳しい評価にある。

これらの投資は大学の研究プロジェクトにも充てられるという。まさに産官学の強力なトライアングルが成り立っている制度なのだ。


社会制度が世界最高水準にあるフィンランド。一体どんな国なのか。自分の目で確かめに行った。



「歩いてフィンランド?」
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ここからフィンランド!

スウェーデンのハパランダ(Haparanda)のバスターミナルで起床。昨夜から雨が降っていてとても寒い。シュラフ(寝袋)がとても温かく、シュラフを出たとたんに凍えて身震いがする。

電車の駅があるフィンランドのケミ(Kemi)遺棄のバスが出発するのはフィンランド時間で9時50分(スウェーデンよりフィンランドの方が1時間早い)。まだ2時間以上も時間があり、この寒い中外のベンチで座って待つのは耐え難い。今日は日曜日。バスが一日に2本しかない。欧州の田舎の日曜日は本当に不便である。

ベンチに座っていると、別方面に向かうバスに乗るグループがやってきた。彼らも旅行者で、次に向かうのは自分が先日までいたノルウェーのナルビック(Narvik)だそうだ。とても良い場所だったと伝えた。

自分がケミに向かう予定でバスを長い間待っていることを伝えると、
「歩いて国境を越え、フィンランドのトルニオ(Tornio)に行けばもっとバスがあるかもしれないよ。歩いて20分くらいだ。」

え?ここから歩いてフィンランドに行けるのか?彼は詳しい道順がわからないというので、近くにあったガソリンスタンドの店員に聞いてみた。

「あぁ、あそこに大きなショッピングセンターが見えるだろう。そこがもうフィンランドさ。」

なんと、フィンランドは自分の目の前にあったのだ。バスターミナルから歩いて5分程の場所に川がある。そこを渡ればもうフィンランドだ。

「田舎の日曜日」
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フィンランドの北部にある街kemi。日曜日はどこも店が開いていない…

フィンランドのトルニオまですぐ近くだというので、歩いてそこに向かう。

ガソリンスタンドから5分歩くと、何の変哲もない橋がある。税関も何もない橋。そこを渡ればもうフィンランドだ。

この橋を越えるだけで、通貨はコルナからユーロに変わり、時間は1時間早くなる。とても不思議な気分だ。

トルニオ市街は日曜日な上、朝早いので店はどこも閉まっている。街は小さく、歩いて30分程で街の反対側に出てしまった。

だが、バスターミナルの場所がわからない。いつもなら通りすがりの人や店の人に場所を聞くのだが、街には誰ひとりいないのだ。

しばらく彷徨っていると、一人の女性が自転車に乗ってやってきた。これはラッキーだ。聞いてみると、バスターミナルの場所を教えてくれた。

「バスターミナル」
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バスターミナルには5人がバスを待っていた。その中に私と同じように大きなバックパックを持つ中年男性がいた。

話してみると、彼もフィンランドのケミに向かうつもりなのだという。時間を聞くと、正確な時間がわかっていないようだ。
「多分来るさ。」
多分来る…欧州田舎街の交通機関に相応しい一言である。

念のため、他の待ち人に聞いてみると、あと30分程でバスは来るという。ここは地元の人を信じることにしよう。

30分程経って、バスはやってきた。良かった。ヘルシンキに行くのに、バスの本数が少なくてもう一日宿泊することになる事態は避けられた。

「ケミに留学するバングラデッシュ人」
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ケミには2時間程で到着。先ほどバスターミナルで会ったドイツ人と一緒に電車の駅に向かった。

ヘルシンキへ向かう列車の発車時刻は11時25分。まだ1時間ほど時間があった。

駅の待合室で、目がぎょろっとして肌の少し黒い一人の若い男が私に声をかけてきた。
「どこに行くんですか?」
「ヘルシンキです。出身は?」
「バングラデッシュですよ。」
聞くとこによるとバングラデッシュ出身の彼はこのケミにある大学に留学し、ビジネス・マネージメントを学ぶのだという。年齢は30歳。同じ大学生だが、私とは年齢が異なる。

実は彼、ここケミに来たはいいもの、大学が始まるのは9月になってからなので、それまで泊る場所がないのだという。
「ホテルの場所がわかりません。私、ずっとここにいようと思ったのですが、駅は夜に閉じてしまうので追い出されるのです。どうすればいいんでしょう。」

自分なら、いつものように駅の外にマットを引いて寝袋に包まって寝るところである。だが、寝袋を持たない彼が外で寝るとなると、とても凍えて眠れないだろう。なんとか助けてあげたいところだが、数少ないヘルシンキ行きの電車を逃すことはできなかった。

一緒にここまで来たドイツ人にも助けを求めるが、彼も困った様子だった。

聞くと、大学はここから歩いて3分で着くという。大学は空いていないのかと聞くと、レストランなら空いているとか。ならばとりあえずそこに行ってみようと、ドイツ人と一緒に3人で行ってみた。

駅から大学まではすぐだった。大学を見てみると、そこそこ大きな4階建て程のビルが一棟建つだけである。ここが留学する大学なのか。
「レストランはどこですか?」
「レストランはお休みです。」
さっき開いていると言っていたのだが…彼の勘違いだったのだろうか。お昼時なので、ついでにレストランがないか街を探してみる。だが、今日は日曜日。街のお店はどこも閉まっていた。ただ一軒、コンビニのような雑貨屋が空いている。そこにいる店員や、街の人々に開いているレストランはないか聞いてみると、
「そんなレストランは知らないな。日曜日だからね。」

この街は、日曜日にこのコンビニしか開いていないのか!レストランの営業していない街など聞いたことがない。ドイツ人はとりあえずコンビニでコーヒーを購入した。バングラデッシュ人は店員と何やら話している。

電車の時刻が迫ってきた。駅へ戻らなければならない。バングラデッシュ人にそう伝えても、まだ店員と何やら話している。なんだかよくわからない。私は先に駅に戻ると伝えると、ドイツ人も一緒に付いてきた。

バングラデッシュ人もよくわからないが、このフィンランドのケミという街、そこそこ広い街だというのに、見渡す限り店は1軒しか空いていない。
「フィンランドは国際競争力が世界で1番だったことがあるって聞いたのに、こんな街があるなんて。」
私がそう言うと、ドイツ人は、
「世界で1番?冗談だろ。見てみろこの街を。どれだけさびれてるんだ。」
確かに、そう思わざるを得ない街、ケミである。

「首都ヘルシンキへ」
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ヘルシンキ方面に向かう電車

午前11時25分、電車は駅にやってきた。ドイツ人に別れを告げて電車に乗り、ヘルシンキに向けて出発した。

ヘルシンキへは一回オウル(Oulu)という駅で乗り換え、約9時間。とっても長い。

列車はIC(Inter City:特急)で、自分の持つ鉄道パス「Interrail Grobal Pass」を提示しても通常指定席料金が取られるところだが、ここフィンランドではそんなことなかった。とても有難い。

オウル駅からの電車には食堂車が付いていた。昼食を何も食べていなかったので食堂車で食事。食べたのはスモークサーモンがはいているフィンランド風のサンドイッチ。おいしかったが、冷蔵庫に長時間入っていたためかとても冷たかった。

この電車には日本にない様々な特徴がある。ペットが持ち込み可能なスペースもあるし、自転車だってもちろん持ち込める。子供専用の遊び場もあるようだ。とても充実したフィンランドの電車である。


車内食堂


「ヘルシンキ中央駅に到着」
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ヘルシンキ中央駅

午後20時頃、電車は駅に到着。9時間は長かった。

到着してまず、明日乗るフェリー時刻を探す。再びスウェーデンに行って電車で西欧に帰るか、そのままヘルシンキからドイツまで、フェリーで直行する手があった。ェリー運賃は、自分の持つ鉄道パスInterrail Global Passで半額又は30%割引となる。インフォメーションはすでに閉まっている。街の様子を見ながらフェリー乗り場に行って時刻と値段を調べることにした。

駅にはそこらじゅうにヘルシンキ市内のパンフレットが置かれている。とても観光客に優しい街だ。地図に沿ってフェリー乗り場へ向かった。

日曜日でもう遅いからか、あまり人通りは多くない。店も今から閉じるところが多かった。首都であっても店の閉まる時間は8時頃なのだ。

ヘルシンキの街並みは、ストックホルムやコペンハーゲンなど他の北欧諸国と比べて規模が小さい。だが、このちょうど良い小ささが私は好きだ。

物価は他のユーロ圏とそこまで変わらない。北欧で一番高く感じたコペンハーゲンよりも高いわけでもないが、そこまで安いわけでもない。ただ、ユーロが使えるので両替の必要がないので便利だ。

「フェリー乗り場」
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ヘルシンキにも自転車ロード

フェリー乗り場に着いたが、ヘルシンキにはいくつもフェリー乗り場があるようで、この港は海を隔てた隣国でバルト三国の一国、エストニアの首都タリンに行くフェリーの港だた。

このヘルシンキからエストニアのタリンまでは高速船で1時間半、値段は19ユーロ~。そんなに近くにあるのならば行ってみたくなる。

調べてみると、この高速船とは違うフェリーを使ってタリンに行くと、私の持つInterail Global Pass で料金が半額になるという。行ってみたい気持ちが徐々に高まってくる。

ここからドイツに直行するフェリーは23時間かかる上、Interrail Global Passを使っても1万円以上費用がかかった。それに比べてストックホルム行きは42ユーロ(約5550円)。半分で行ける。ストックホルムからドイツまで電車で行く費用は、Interrail Global Pass を使えば指定席料金5ユーロ(650円)程度で済んでしまう。

一度タリンに行ってヘルシンキに引き返した後、ヘルシンキからストックホルムに行って西欧帰る。そのプランが、私にとってベストなようだ。

「公園で自炊」
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さて、せっかくヘルシンキに来たので宿を節約している代わりにおいしいものを食べに行きたいところだが、明日行きたいレストランがあったのでここは明日のために節約し、野外で自炊することにした。

キャンプ用のガスコンロで料理をするわけだが、ガスの残りは少ない。料理ができるかはちょっとしたかけだったが、火を使って料理した方が、おいしくてたくさん食べることができる料理を作ることができる。

時刻はすでに9時を過ぎ、辺りは暗くなっていた。どこか自炊する材料が安く買えるスーパーマーケットはないだろうか。だが夜遅い上、今日は日曜日である。スーパーが開いている可能性は低い。

通りすがりの人にスーパーがないか聞いてみる。
「この時間じゃあね。どこにもないよ。」
すると、一緒にいた人が、
「駅にならあるかもしれないわ。」
礼を告げ、中央駅へと向かった。

中央駅の地下は地下鉄駅があり、ショッピングセンターがある。そこにスーパーがあり、なんとまだ開いていた。さっきの人、ありがとう!

スーパーでは朝食にりんごとバナナを購入。合わせて60セント(約80円)程。安かったので1ℓの100%オレンジジュースも45セント(約60円)で購入した。夕食にはインスタントのチーズポタージュ2食分を2ユーロ(約260円)で購入。これを使ってスープパスタを作ろうと思った。

自炊のできそうな公園を見つけ、夜暗い中公園で一人、鍋をぐつぐつ煮ながら料理をする。いつもなら安全のため、もう少し人がいそうな場所を選ぶのだが、なかなか良い場所が見つからなかった。

コンロのガスが少ないので、火を節約しようとパスタを茹でたお湯でチーズポタージュをを作ったのだが、これは失敗。とてもひどい味だ。小麦粉の味がポタージュを薄くしてしまっている。調味料で味を調えても改善しない。完成したスープパスタはとてもまずかった。こんなにまずい自炊料理は初めてである。

「駅泊」
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ヘルシンキの宿は一泊20ユーロ(2600円)~。私にとっては高いので、今日も駅で寝ることにする。駅の中で寝ようとしたが、夜1時に閉まってしまったので、駅の外にシートを敷いて寝袋で寝た。

クラクフの宿に泊ってから1週間以上も宿に泊っていないが、なんとか生活できている。人間、やろうと思えばなんでもできてしまうものだ。

タケノコ

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