10月30日 エジプト(6) アスワン:「移築された巨大神殿」


アブ・シンベル大神殿

今日向かったのが、南エジプト最大の見どころといえる「アブ・シンベル神殿」だ。

昔、この辺りの農作物収穫量は年に1度のナイル川大洪水の量によって左右されていた。そこで安定的に農作物を収穫できるよう、ナイル川に世界最大規模のダムを建設しようという計画がなされた。しかしそのダムの建設によって多くの遺跡が水没する危険性があった。そこでUNESCO(通称:ユネスコ、国連教育科学協力機関)は各国の協力のもと、このアブ・シンベル大神殿を始め、14の神殿、3つの聖堂、1つの墳墓が移築されたのだ。なんとも大胆なプロジェクトである。

今回行くアブ・シンベル神殿は1036のブロックに切断され、5年の歳月を掛けて移築された。

これほどまでにしてこれらの遺跡を守るということは、歴史上相当重要なものだということだろう。

そんなアブ・シンベル神殿、一体どんなところなのか。自分の目で確かめに行ってみた。


「起床」
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起きたのは午前3時。ツアーは3時半からだというのに、ホテルのレセプションは3時に起こし、
「あと5分で支度してください!」
と言ってくる。3時半じゃないのか?と聞くと、
「すぐに支度してください!」
と繰り返すだけだ。とりあえず部屋に散らかった荷物をまとめ、ロビーへと向かう。すると、
「朝食を食べるか?」
と聞いてくる。
「食べる時間はあるの?」
「大丈夫。朝食を食べるか?」
どうやらこの男、朝食を食べさせるために早く起こさせたようだ。一食3ポンド(約45円)だったので注文した。出てきたのはパン2本とストロベリージャムのみ。とても簡素な朝食である。この辺りにしてはこの朝食は高かった。

「ツアーへ」
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ツアーはアブ・シンベル神殿、フィラエ神殿を含む4つのスポットを回るもので、料金は80ポンド(約1200円)。アスワンからアブ・シンベル神殿まで行くのに片道3時間かかることを考えれば高い値段ではなかった。

ミニバスに乗っていると、隣に日本人がやってきた。名前はヒロさん。なんと南アフリカのケープタウンから東アフリカをずっと北上してここまでやってきたのだという。昨日までスーダンにいたのだとか。スーダンといえば今も紛争が起きている国である。
「危ないのは南だけだよ。北は平気。」
場所を選べば大丈夫なのだろうか。

ヒロさんは韓国人チンさんとスーダンで出逢い、それから一緒に旅をしている。チンさんはミニバスの前の方に座っていた。自分らはしばらく話しをした後、早朝だったこともあったので上下に揺れるミニバスの中でぐっすりと寝た。

「国際学生証」
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午前7時頃、バスはアブ・シンベル大神殿へと到着した。

アブ・シンベル大神殿への入場料はなんと80ポンド(約1200円)。しかも国際学生証が使えないのだ。誰でも簡単に作れるし、偽物を持っている人が多いからだろう。だが、国際学生証が使えない場所など聞いたことがない。

ただ、韓国人のチンは学割が使えた。「退役軍人証明証」を見せながらこれが「ミリタリー・アカデミー学生証」だと言い張って学生だと証明した。もちろんチンは学生ではない。自分は本当の学生だというのに、学割が効かず、学生でないチンが学割が効くというのは悲しくなってくるばかりである。

「アブ・シンベル大神殿」
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アブ・シンベル大神殿は正面に4体の像が立ち並ぶ巨大神殿。太陽王と呼ばれるラムセス2世が建立した。このラムセス2世、なんと200人の子供を産んだのだという。なんとも強靭なファラオである。

中は12の部屋に分かれ、全ての部屋の壁一面に壁画が施されている。壁画にはヒエログリフや2次元のイラストが所狭しと描かれていた。中心の大列柱室の天井は高く、どこか神聖な雰囲気を漂わせる。

朝早いというのに観光客の数は多い。エジプト1、2を争う観光地というのは嘘ではないようだ。

「フィラエ神殿」
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フィラエ神殿

次に向かったのはフィラエ神殿。こちらも国際学生証が使えず、入場料は60ポンド(約900円)。チンは相変わらず退役軍人証明証が使えた。

フィラエ神殿はナイル川の川中島であるフィラエ島にある。そこまでボートで行くのだが、ボート乗りと交渉した結果、ツアーの人達合わせて6人分往復100ポンド(約1500円)で話しがついた。一人当たり17ポンド(約255円)である。

片道10分程で到着。フィラエ神殿はアブ・シンベル神殿とはまた違った雰囲気。島の建物が全体的に四角く形取られ、アブ・シンベル神殿のように大きな像はない。見た目はとてもシンプルな神殿である。

神殿にある壁画の多くは削り取られているのだが、それは昔キリスト教の軍隊がこの地を攻めた時に行われたものだという。その証拠に、柱や壁画に多くの十字架が彫られていた。人類の悲しい歴史を物語っている神殿である。

「アスワンへ」
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ツアーにはあと「アスワンハイダム」と「オベリスク」を回ったが、入場料を支払わなければならないので諦め、バスの中で待っていた。

ヒロさんとチンさんはこれからルクソールに向かうという。自分もこれからルクソールに向かおうと思っていたので、一緒に行くことにした。電車とバスのルートがあり、バスの方が安いのだが、街からだいぶ離れている場所にバスターミナルがあるので、電車で行くことにした。

電車は1等と2等に分かれている。外国人は何故か2等の切符を購入することはできないのだが、車内で購入できる。電車はなんと1時間遅れて到着し、1時間40分遅れて出発した。いかにもエジプトらしい。

駅で東京外語大学に通う日本人2人と台湾人に会った。皆トルコに留学しており、トルコからここエジプトに旅行しにきているのだという。3人の共通語はトルコ語。当然ながら何を言っているのかさっぱりだった。

「ルクソールへ」
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ルクソールへは3時間程で到着した。電車の中のクーラーはとても強い。カイロからアスワンまでの長距離バスでもクーラーが強かったが、この電車も同じだった。

電車から降りると、なんだか気分がとてもだるい。額に手を当ててみると、とても暑かった。どうやら風邪をひいたみたいだ。もしかしてインフルエンザやマラリアではないかと心配した。なにせここはアフリカ大陸の一角、エジプトである。

幸い、韓国人チンは看護師。しかも新型インフルエンザにも効くタミフルを持っているというからひとまず安心した。

チンが韓国人バックパッカ―の間で有名なマンドゥーというエジプト人を呼び寄せ、良い安宿を紹介してくれた。内装はとても綺麗なうえ、ドミトリー一泊7.5ポンド(約110円)という安さである。自分は病気でゆっくりと療養したかったのでシングルの一泊15ポンド(約230円)で泊ることにした。それでも十分に安い値段である。

病気のせいか、体力はかなり消耗していた。栄養と水分はとらなければいけないと思い、フルーツドリンクとミネラルウォーターを購入して飲み、持ち合わせのパブロンを飲んでホテルですぐに寝た。

風邪だといいな…

タケノコ

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