11月20日 ヨルダン(2-2) 死海「沈まぬ体」


死海・アンマンビーチ

今回向かったのは死海。海抜300m以上下にある、世界で一番低地にある大きな湖である。

死海から出る川はなく、乾燥地帯で昼間は冬でも暑いため、湖が蒸発して塩分濃度が30%と非常に濃くなっている。塩分だけでなく、日本の4大公害病の一つであるイタイイタイ病の原因となったカドニウムも通常の海水に比べて3000倍の濃度を含む。水質の良い湖とは言い難い。

ただ、この死海、塩分濃度が異常に高いため、体が沈まず浮き上がるのだ。どんなカナヅチでもこの湖で溺れることはない。ただ、体が浮きやすいのでバランスが取りにくい。こんな水質の水が目にでも入ったら大変。なんとしてでもバランスを取らなくてはいけない。

死海はヨルダンとイスラエルの国境。イスラエル側からも死海を体験できるが、今回はヨルダン側の死海を体験してみることにした。


「マンスールホテルの朝」
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マンスールホテルは日本人の間で有名な首都アンマンにある宿。何が有名かというと、宿の従業員のサービス精神がすごい。

片言の日本語を使い、何かあればいつも
「モンダイナイヨ~」
と陽気に答えてくれる。昨日は宿に着くと砂糖がたっぷり入った紅茶を用意してくれたり、タバコを何度も勧めてきたり、読み物をしているとコーヒーを出してきてくれたり、日本語のガイドブックを貸してくれたり。彼のサービス精神は底をつくことがない。

ドミトリーで一泊3.5ディナール(約420円)と安いのに、朝食が付いてくる。朝食はアラビアのパン食べ放題とジャム、チーズ、茹で卵一つに紅茶。朝食ならばこれで十分だろう。

これから死海に行くというと、宿の従業員は行き方やタクシーの相場など細かく教えてくれた。死海はメジャーな観光スポットだが、あまり交通機関が発達していないようだ。荷物をマンスールホテルに置いて、死海へ向けて出発した。

「死海へのバス」
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死海近くの村へ向かうバスは、ホテルのあるダウンタウンから少し離れたバスターミナルから出ている。バスターミナルへ向かうためにまたバスを使う必要があった。

バス停でバスターミナルへ向かうバスはどれかと通りすがりのおじさんに聞くと、
「待ってろ。バスが来たら教えてやるから。」
と言ってくれた。バスターミナルはそんなに遠い場所でもないし、地元の人々も頻繁に利用する場所だろうと思っていたのでバスの本数は多いものだと思っていたが、なかなかバスは来ない。30分くらいしてやっと到着し、
「さぁ、乗った乗った。」
と言うおじさんに言われるがままバスに乗車した。

バスに乗っているとおじさんは、
「この辺りが俺の住んでる街だ。この通りに俺のうちがあるんだ。」
と言って笑顔で話してくる。そうなんだとおじさんの話を聞いてしばらくすると、おじさんは、
「ところで君はどこにいくんだ?」
と言ってくるではないか。さっきから自分はずっと言っているではないか。バスターミナルに行きたいのだと。そういうと、おじさんは
「もうバスターミナルはとっくに過ぎたよ。でも大丈夫。このバスは折り返しバスターミナルに向かうからさ。」
おじさんにまったく悪気がある様子はない。こうして自分は普通の3倍近い距離のバスに乗ることになった。

地元の人を完全に信用した自分に過ちがあったのは言うまでもない。アラビア諸国ではよくあることである。

「死海へ」
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アンマンビーチ

バスに乗って死海近くの村に到着。料金は0.7ディナール(約84円)。時間は2時間近くかかったが、それでこの値段は安い。そこからタクシーで20分程走る。タクシーの値段は3ディナール(約360円)。死海へ向かうバスが全く走っていないので仕方がない。

そして到着したのが死海沿岸にある国営の「アンマン・ビーチ」っだ。ある種のリゾートのようになっており、淡水のプールやレストラン、カフェなどが併設され。シャワーやロッカーの設備も充実している。だが、料金が12ディナール(約1440円)と高い。実は隣にもっと簡素なビーチで料金が7ディナール(約840円)というものもあったのだが、自分はその存在を知らず高いビーチに入った。

ロッカーに荷物を預けて早速死海へ。空気は暖かいといえば暖かいが、水に入るには少し肌寒かった。徐々に深い場所に進んでいき、水が腰に浸かると体が浮いてくるのがわかる。そしてそのまま足を底から離すと、一気に体が浮いた。立ち泳ぎを全くしなくても体が浮くのだ。自分はそのまま体を横に向け、空を眺めながら死海をプカプカ浮いた。不思議な体験である。

死海から出て体をそのままにしておくと、肌の表面に塩の結晶ができ、油を塗ったようにべとべとになった。やはり死海の水質は、良いわけではなさそうである。シャワーを浴びて売店のアイスクリームを食べ、死海を後にした。

「アンマンへ」
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行きと同じように片道3ディナール(約420円)のタクシーに乗り、バスに乗り換えてアンマンへ向かった。

途中で乗り継いた村で、路上で売られているコーヒーを一杯購入。この辺りのコーヒーは普通のコーヒーと違う「アラビア・コーヒー」。グリーク・コーヒーやトルコ・コーヒーと同じ類のもので、豆を挽いてお湯をろ過して飲む通常のコーヒーと違い、粉末にしたコーヒーをそのままお湯で煮るのだ。

正直言ってあまりおいしいものではない。自分の飲んだコーヒーは若干洗剤のような味がした。一杯0.25ディナール(約30円)である。

「ヨルダン、最後の晩餐」
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コフタ

首都アンマンに到着した後、ヨルダン最後の夕食に出た。食べたのはマンスールホテルに泊っていた人に教えてもらったケバブ屋さんのケバブと、昨日も食べたコフタ。コフタは羊の肉ペーストとトマトをオーブンで焼いたもの。アラビアパンと一緒に食べるのだが、オーブンでこんがり焼かれるその香ばしさが自分は好きである。

お勧めされたケバブは、鶏肉が入っているもので、ケバブの表面が鉄板で焼かれているためカリカリ。なかなか美味しいものだった。

ケバブは一本1.5ディナール(約195円)、コフタは一皿2ディナール(約240円)である。アンマン・ダウンタウンのレストランは比較的リーズナブルな場所が多い。

「シリアへ」
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ヨルダン最後の夕食を楽しんだ後、次の目的地、シリアの首都ダマスカスへ向かった。

アンマンからダマスカスへの所要時間は3時間程。セルビスという乗り合いタクシーで移動する。

ダマスカスへ向かうセルビス乗り場へ行くために、ダウンタウンからまた他のセルビスを利用する。マンスールホテルの日本人が、目的地は違うが方向は同じだというので一緒にセルビスに乗った。この日本人は自分と一つ違い。なんと今年12月からパイロットとして某J社に入社するのだという。卒業してから入社まで時間があったのでこうして旅をしているそうだ。

さて、自分達二人を含めた4人の乗客を乗せたセルビス。行きたい目的地をを告げて乗ったのだが、セルビスはいつの間にか自分の目的地とは全く違う場所に到着してしまった。到着した場所はもう一人の日本人の目的地である。自分の目的地はとうに過ぎてしまったようだ。

「俺の目的地、ちゃんと言ったじゃないか。覚えてないのか?」
運転手にそう問いただしても、彼はあまり英語ができないようでうまく伝わらない。
「おまえもここに来たかったんじゃないのか。いいから金払え。」
とりあえずそう言いたいようだ。
「とにかく戻ってくれ。そうしないと俺は困るんだ。」

近くにたまたま英語ができるヨルダン人が現れたので、なんとか通訳して説得でき、シリアへ向かうセルビス乗り場へ乗せて言ってくれた。ただ、運転手は早く家に帰りたいらしく、自分をせかすようにしていた。なんだか気分が悪い。

だが、今日の午前中も同じようなことがあったように、中東では思い通りに事が進まないことが多い。こんなことでいちいち腹を立てていてもあまりいいことはないのである。途中どんなハプニングがあろうと、最終的に目的が達成されれば良い。そう考えるしかないのである。

そうして自分は無事シリアへ向かうセルビス乗り場に到着。無事ヨルダンを抜け、シリアの首都ダマスカスに到着した。



タケノコ

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